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「やぁこんにちわ、可愛いお嬢さん。なにがそんなに悲しいの?」
その小さな人は、白と黒で色分けされた服を着て、同じように色分けされた二股の帽子を被っていて、まるでピエロのように見えました。
「不思議だわ、こんなに小さな人がいるだなんて」
アリスは泣くのを忘れて、大きな目をこぼれるくらいに見開いて、その人を見つめました。
その人はちょうどカリンと同じくらいの大きさで、宙に浮いているのです。
「翼がないのになぜ浮いていられるの?」
「僕に翼は必要ないんだよ、お嬢さん」
ピエロはにっこり笑って言いました。
「それよりもお嬢さん、なぜ泣いていたの?」
そう尋ねられて、アリスはハッと気がつきました。カリンの手はまだ見つかっていません。
「ああそうだわ、私、お姉さんの大切にしているカリンちゃんの手をなくしてしまったの。どこにもないのよ。ちょっと私がお昼寝をして、目を覚ましたらなくなっていたのよ。どうしましょう、お姉さんきっと悲しむわ。私の事などきっと嫌いになってしまうに違いないわ!」
頭の中で、大好きなお姉さんに嫌いだと言われたような気がして、アリスはまたわっと泣き出してしまいました。
すると小さなピエロが、流れ落ちる雫を小さな手で拭いながら言いました。
「ああ泣かないで、お嬢さん。僕がきっと探し出してみせるから」
ピエロは濡れた手を振って雫を落とすと、どこからか赤いハンカチを取り出しました。
そして、そのハンカチの端を持ってぐるぐる回し始めると、不思議な事にハンカチの輪はどんどん小さくなっていき、終いにピエロが高く宙に放り投げると、手元に戻ってきた赤いハンカチは赤い薔薇の髪飾りになっていました。
「さあお嬢さん、これをあげる。泣かないで、カリンの腕は必ず見つかるよ。僕と一緒に探しにいこう?」
ピエロから髪飾りを受け取ると、なぜか今までのどんよりした気持ちが嘘のように軽くなりました。
アリスは髪飾りをつけて立ち上がると、ピエロに尋ねました。
「ほんとのほんとに、カリンの腕を見つけてくれるの?」
「うん。ほんとのほんとに見つけてあげる」
アリスはにっこり笑うと、まだ少し浮かんでいた涙を拭いながら言いました。
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