名無しのピエロ

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「私、アリス・アドリゲスっていうの。あなたは?」 「僕は名前がないんだ」 アリスはびっくりしてしまいました。名前がない人なんて初めてだったのです。 「なぜ?」 「うーん。僕を作ってくれた人が、名前をくれる前にいなくなっちゃったのさ」 ピエロは二股帽子の先についている、白い毛のふさふさした玉を弄りながら言いました。 「それだと困るわね。なんて呼んだらいいか分からないわ」 「うん。でもみんなピエロって呼ぶよ」 アリスはなるほど、と思いました。ピエロの格好をしているのですから、そう呼んでも別にかまわない訳です。その時、アリスはいい考えを閃きました。 「そうだわ、ねえピエロさん。私、あなたに名前を考えてあげるわ」 「え?」 「カリンの腕を見つけてくれるお礼に、私がピエロさんに名前をあげる」 今度はピエロがびっくりしてしまいました。今までずっとピエロと呼ばれていたので、名前をつけてもらうなんてこと考えもしなかったのです。 「嫌?」 ピエロがあんまりびっくりした顔をするので、アリスは心配になって聞きました。もしかしたら、ピエロは今の呼び名が気に入っているのかもしれないと思ったのです。でもピエロは、顔を真っ赤にして首を振りました。 「ううん!嬉しいよすごく!ちょっとびっくりしてただけさ!」 アリスがよかった、と笑うと、ピエロも照れたように笑って俯きました。 こうして、ピエロとアリスはカリンの腕を探す事になったのでした。
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