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アリスの涙が乾いた頃、ピエロは明るく言いました。
「さぁお嬢さん、カリンの腕を探しに行こう」
「うん…だけど、どこを探せばいいのかしら?」
「大丈夫!アテはあるよ」
ピエロがくるんと一回転すると、どこからか小さな鍵が現れました。それをさっきのハンカチのように高く放りあげると、鍵は空中で光に包まれピエロより少し小さいくらいの大きさに変わって戻ってきました。
「この木でいいかな…」
ピエロは辺りを見回して、少し離れた場所にある大きな木に近付きました。
そして、手にしていた鍵の先で木の幹を叩くと、その幹には黒い穴が開いてしまいました。
「あっ」
ピエロは鍵を元に戻すと、アリスの手をひいて言いました。
「さぁお嬢さん、この穴を通ってヒトガタへ行くよ」
「ヒトガタ?」
「うん。お嬢さんは、捨てられた人形やぬいぐるみがどこへ行くか知ってる?」
もちろんアリスは知りませんでした。捨てられた人形たちがどうなるか、どこへ行くかなんて考えた事がないからです。
「ヒトガタは捨てられた人形やぬいぐるみが行き着く場所なのさ。人形やぬいぐるみだけが暮らしている場所なんだよ」
今日は驚く事ばかりです。お人形のようなピエロに会って、お人形だけの世界があると聞いて、アリスは目を真ん丸にしていました。
「この穴を通ればいけるの?」
「うん」
ピエロはにっこり笑って、アリスの手を引いたまま穴に入って行きました。
「あっ、まっ…」
待って、と言い終わる前に、アリスは穴の中に引き込まれてしまいました。
目の前が一瞬暗くなったと思ったら、今度はくらくらする程明るくなって、咄嗟につぶった目をそっと開けると、そこはさっきまでの場所とは違う、賑やかな街の中でした。
「あれ…」
「ヒトガタについたよ」
ピエロはあっさり言いました。
「え?」
「ヒトガタについたよ」
ぽかんと口を開けているアリスに、ピエロはまた言いました。
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