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「やあピエロくん、ご機嫌麗しゅう。今日は可愛らしいお嬢さんを連れてどちらへ?」
その人形は羽の付いた帽子を被って、青い服に赤いマントをして、腰にサーベルを下げていました。目はなんだか睨んでいるようで、アリスは少しだけ怖くなりましたが、やっと誰だか思い出せました。
「やあ、ナポレオン皇帝。今日は彼女の探し物に付き合っているんですよ」
あのフランスの英雄、ナポレオン・ポナパルトでした。少し前に、お姉さんの教科書を見せてもらったことがありました。
「おお、なんと心優しい事か。流石はピエロくんだ。ではそんな優しいピエロくんにいい事を教えてさしあげよう」
ナポレオンは帽子の端を指先で少し押し上げて言いました。
「コーダ嬢が、寝ている間に足を失ったと騒いでいたよ」
「コーダが?」
「うむ。また夢うつつではあるが、赤毛が見えたと言っていたそうだよ。まあ我らのような人形であれば、赤毛などは珍しいものでもないが」
ナポレオンはあげた帽子をまた深く被り直して付け加えました。
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