父さん。

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生徒と生徒の間をかいくぐり、猛ダッシュで走る音がする。 きっとまたあいつだろうとそのクラスにいる誰もが思った。 汗と眼鏡で光る先生らしき女の人がチョークを器用に一回転させてドアに向けて構える。 ガラガラガラッ 「おはようござ」 ヒュッと耳の近くで何かがかすった。 「ちっ……当たらなかったか」 ひぇーあぶね、危うくチョークで脳しんと…う。 とっさの反射神経で第二波を上体を反らしてかわす。 「隙ありと思ったんだがな。早く入れ、あとチョークも拾えよ」 廊下にいた生徒に謝りながらチョークを拾う。 チョークはどこも折れず、割れず廊下に転がっていた。 どうやったらこんな折れないようになってんのか、はたまた先生の技量が凄いのか……後者のほうが怖いな。 「おい、遅刻免除消してやろうか?」 「いや、お願いだから消さないでください」 クラス中から笑いが聞こえる。 どうやら僕と先生のやりとりは面白いらしい。 ちなみに遅刻免除というのは冗談だ。 なぜかというと僕のクラスはチャイムの鳴る10分前には出席をとるのだ。 理由はというと、先生が準備に時間がかかるという何とも不躾な理由だ。 「よし、出席とんぞー」 白衣とピンク色の生地に黒のレースであしらったワンピースを翻し、先生が教卓の前についた。
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