父さん。

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彼女の名前は撫子 薫(なでしこ かおり) 担当教科が数学のくせに白衣を着ているためしばしば物理科学の先生と間違われる。 そしてそんな彼女のあだ名は 「おい、返事をしろよ。名前で呼ぶぞ、 」 「いきなり何ですか『チョーク先生』」 おや、何だか先生の堪忍袋の尾が切れたような気がしたな。 その時、既に僕以外のクラスメイト全員が教室から廊下へ避難して、教室内は僕と先生だけになった。 「てめぇ、ぶっ殺す」 白衣が全面的に開かれ、風で中にある弾丸のように仕込まれたチョークがちらほらと見える。 そう、先生はそのあだ名で呼ばれるとキレて相手をチョークで真っ白にして脳震盪をおこさせる。 というわけでこのあだ名は『禁忌』と称される物なのだ。 僕は面白いから言うけど。それに最初に先生が僕の名前を言おうとしたのがいけないんだし。 「先生が汚い言葉を使っちゃ駄目ですよ」 「うっせえ」 先生は白衣に仕込んであるチョークを両手で構える。 「覚悟しろよー!!」 マシンガンのように繰り出されるチョークを椅子や机で弾き飛ばす。 だが、少し顔に掠れるとピッと切り傷ができた。 どんだけ鋭いんだよ。 しかし鋭い分柔らかいようで、あたり一面がチョークの煙に囲まれた。 鼻がむずがゆい、くしゃみがでそうになる。 「早く謝りやがれ、くそっ、周りが見えねえ!!」 どうやら先生は僕がどこにいるか分からないようで命中していたチョークが外れてきている。 今のうちに逃げてしまおう。 僕は鼻をすすりながら煙に身を隠し、扉を音が出ないように開けた。
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