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バタンと扉が閉まる。
待って、と言いそびれて部屋に一人残された私はとっさにでた手をダラリとぶらさげた。
「何なの、あれ……」
さきほど口にでた言葉が無意識にだされる。
ただ名前を言っただけなのに、ちょっと好奇心で言ったつもりだったのに、何なの、あれは。
一瞬にして皆が倒れていって、あとはだらしのない中年のおじさんだけ。私はその時、死ぬかもしれないと思った。
でも彼は、 は私には手を出さなかった。そして、最後にボソッと誰にも聞こえないような声で言ったのだ。
「姫、あとで来るから」
来るからと言うのはこの部屋にと言う言葉だろう。もしかして私には皆の見えない場所で……今日だけ紅葉さんの部屋で寝かしてもらおうかと思ったけどそうはいかない。
だってこの鎖がついているんだもの、逃げても鎖で分かる。
無駄に長いくせに玄関には届かない。部屋に居るときと壊れた時用の鎖。壊れるわけないのに2つも何でいるのだか。
ああ、何で私はこんな目にあってるわけ?
扉に鍵を閉めてベッドに座り込む。
そして が来るかもしれないその前に、私は過去を、この忌まわしき家に来た時を思い出していく。
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