私はシンデレラにはなれないの

2/2
88人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
アタシは、小さい頃の誕生日にプレゼントとして両親が買ってくれた「シンデレラ」の絵本が大好きで宝物だった。 魔法使いに貰ったキラキラのドレスにカボチャの馬車、王子様との素敵な時間、そして2人を引き逢わせた運命のガラスの靴。その世界の全てに虜になったアタシは「自分にも魔法使いが現れてキラキラの魔法をかけてくれる、そして素敵な王子様と出会い幸せになるんだ」そう信じて疑わなかった。 だって、お父さんと別れた後のお母さんはシンデレラのお母さんと同じように、アタシに酷いことをしていたから。お揃いねって笑うと身体中の痣と煙草の跡がジリジリと熱を帯びて、まるでシンデレラの痛みがアタシの体に響いてるみたいだった。 それでもいつか来る幸せに想いを寄せながら、寝る前にボロボロになった「シンデレラ」の絵本を読んで痛みに耐えながら眠りに付いた。あの頃のアタシは身も心も傷だらけで、でも真っ白で純粋で綺麗だった。 アタシは今、17歳。母親が薬中でいなくなったから風俗で働いている。勿論高校なんて通って居なくて、昼も夜も汚いオヤジのモノくわえて年齢には不釣り合いな金額を貰ってる。ブランド物のドレスに靴それに車。欲しい物は自分の力で手に入るようになった。でも身も心も汚れきって、キラキラの魔法も素敵な王子様も運命を変えるガラスの靴も、アタシには似合わなくなっていたわ。 (夢を見ることを諦めたアタシは、魔法使いを待つことすら出来なくなってしまったの。)
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!