「彩雲」

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「約束だったでござるな。去年は小さなモノしか贈れずに。来年はと、誓ったでござった」  そういうと、薫の手を引っ張り、剣心は自室へと連れていった。 「なんだよ朝っぱらからうるさいなぁ。…なんだ剣心、と薫…ん?どうしたんだ?」  弥彦が隣の部屋から顔を覗かせる。 「はいはい。お子様は引っ込む」  左之助が気を利かせたのか、弥彦を連れて居間へと走っていった。 「あの、…本当は花くらい準備するものだと妙殿が教えてくれたし、恵殿は、なにやら外国風にお洒落に行けと言ってたでござる」  剣心はゴクリと唾を飲み込み、緊張してるのか、額に汗が滲み顔も紅く染まっていた。  そんな彼の緊張が薫にも伝わり、握られたままの手が震えているのが判った。 「うん」  薫はひとこと。頷いた。  剣心はそっと手を離し、深く、深呼吸。 「そう思って色々探してみたし、洒落た店も回ったが…拙者には何やら場違いな感じで…」  そう言うと、横にある箪笥の一番上の引き出しを開けた。  そこから小さな紙袋を取り出す。  薫の方を向き、その紙袋から、さらに小さな箱を出す。両手で大事そうに箱をあける。  中身を薫に渡す。  薄絹風の艶のある布にくるまれていた。広げると、小さな紅い石のついた指輪がコロンとその手に転がった。 「拙者には精一杯でごさるが…その…誕生日の祝いでござ…」 「はめて」  言葉を遮るように薫は指輪を剣心に渡す。 「はい。……でござる」  剣心は受けとると、薫のその左手を取る。 「薫、殿。――拙者は薫殿に逢い、大事な物を思い出した気がする。……人を、愛するという気持ちを」  剣心は薫の左薬指に優しくはめた。そしてもう一度深呼吸。 「拙者と、結婚…して欲しいで…ござる」 「…はい…」  微笑む薫の頬に一筋、涙が伝う。
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