「箱庭」

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 良かった。頑張って気合い入れた甲斐があった。  台所で朝食に取り掛かりながらも、気持ちはうわの空。  何度も何度も、左薬指を眺める。  念願だった剣心からの告白。  ふと、後ろに気配を感じ振り向くと、左之助がにやつきながら立っていた。 「やったな嬢ちゃん。おめでと」 「ふふ。ありがと」  そう言って、左之助に指を見せつける。 「ん?そっちは外さねぇのか?」  左之助は反対の、右の指に輝く指輪をさす。 「うん。でも、近いうちに持って行こうかなって考えてるんだ」 「…何処にだって?」 「お父さんと、お母さんに見せるの」  薫がまだ小さい頃に亡くなった両親のお墓に捧げるという。今日は誕生日だし、両親へ感謝を込めてと。 「ああ、この道場を創ったとかいう親父さんか。きっと喜ぶんじゃねぇの?こんなじゃじゃ馬娘が、ようやく結婚なんてさ」 「なんですってぇ?」  包丁を振り上げる薫から逃げるように台所を後にする左之助。 「っつうか、剣心の方が嫁入りみたいだぜ。可哀想に……」  と呟いたのは薫に聞こえたかどうか。
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