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「おめでとうございます~薫さん、剣心さん!」
報告に向かった『赤べこ』で、妙や燕が喜んでくれた。
小國診療所にも行き、皆が集まる。そのまま妙の奢りで宴会が始まった。
燕は羨ましそうに、薫の指輪を眺めていた。そしてついつい、自分の左手を掲げてしまう。
「……あと数年待って……」
横に座っていた弥彦がぼそりと呟いたが、燕にはよく聞こえなかった。
「え?何か言った?」
「べ、別にッ」
やけに顔を赤らめている弥彦に左之助が絡まる。
「お子様にゃ、まだ早ぇよ。な、燕ちゃん」
「ば、バカ!何いってんだ!……んなことより、他人の事いえるタチかよ」
左之助は弥彦の頭を軽く叩く。
「うっせーよ!だいたいあんな女狐……」
「あんな、で悪かったわね。誰もアンタなんかに告白してもらおうなんて思ってないわよ」
「め、恵……」
後ろに立って睨み下ろす恵に耐えかねて、左之助は赤べこから出ていった。追いかける恵。
「大丈夫でしょうか……あの二人」
カヤの外といった感じの燕は、心配そうに眺めていた。
「ふふふッ。ああみえて仲、いいんどすから……。はぁ…ウチも愛しい人欲しいわぁ~」
妙が燕の肩をポンと叩きながらそっと耳打ちした。
「ここはええから、弥彦くんと散歩でもしとき?どうせ薫ちゃんたちは気づいてないからね。裏の土手に綺麗に咲いとったから見とき?大きな紫陽花、満開や」
「はい。有難うございます!」
燕と弥彦も赤べこを後にして、残った剣心達もそろそろと宴会をお開きにした。
「楽しかったね。剣心」
「でござったな。――さてと、これから忙しくなるでござるな」
「そうね。……頑張っていかないと!」
ぽつり、と降りだした雨に帰り道を急ぐ。
紫陽花から飛び出した蛙が一匹、ゲロゲロ鳴いた。
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