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「どうしたんだ、スギタ?」
助手席のフェアマンが、スギタの様子に気付いた。
「いや、気のせい・・・だな、」
スギタは呟いて、軽く頭を降ってハンドルを握り直す。
「すまない、スギタ煙草を買わせてくれ」
交差点の信号待ちでフェアマンが急にアタッシュケースを手にしたまま、車を降りた。
「おい、ケースは・・・」
スギタの声が耳に入らなかったのか、フェアマンは、煙草屋を探すように周囲をみわたしている。だがその方向は店の並ぶ舗道側ではかなく、車の行き交うストリート側だった。
スギタの胸ポケットで、携帯が振動した。非通知の表示に、相手の見極めがつかぬまま通話ボタンを押す。
「スギタサン。ブティックニ客ハイマセン」
何だ今のは。間違い電話か?」
ふに落ちないまま視線を外に向けた瞬間、フェアマンが銃を発泡した。交差点で横から飛び出してきたトレーラーが横倒しになって火を噴く。トレーラーは火花を散らせながら勢いをつけてスギタの車に向けて滑ってくる。
いつの間にか、背後の車が、トレーラーとで挟み込むように追っていた。
「くそっ!やっぱりつけられていたかっ⁉」
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