偽りの仮面 ~put on a mask~

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「いやぁ…毎度毎度、弓削さんには感心させられますねぇ」 拍手が止むと、隣にいる教師が、私に柔和な微笑みを浮かべた。 「前もって予習をしっかりしていたのかな? 弓削さんは真面目ですねぇ…」 ――――びしり、と。 私の心に、亀裂が入った。 真面目。 教師は私に賞賛の言葉を贈ったつもりなのだろう。 だが私にとって、その言葉は呪いのようなモノだった。 いや、むしろ呪いそのものだった。 真面目、真面目、真面目。 幾度も言われ続けてきた、言葉。 真面目? 違う、私は真面目なんかじゃない。 単に、真面目を装っているだけだ。 本当は予習なんてしたくない。 勉強なんてしたくない。 別に良い成績なんて取りたくもない。 私へ囁かれる『真面目』という呪文は、自身を偽っている事に対する証明に他ならない。 真面目と言われる度、オマエは嘘つきだ、と罵られている気持ちになる。 否、気持ちになる、ではない。 正にその通りなのだ。 面と向かって『この嘘つきめ』と罵倒されるのと同じなのだ。 胸が詰まり、息が苦しくなったような錯覚に陥る。 私を呪う教師の横っ面を、殴り飛ばしてしまいたい衝動に駆られる。 …いや、殴り飛ばしてしまおう。 そうだ、それがいい。 もしかしたら、それこそが“本当”の――――――― だが。 「あ、あはは、そんな直球で誉められると照れちゃいますよ、もぉ~」 私の口から出たのは、内心とは正反対の、そんな言葉だった。
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