赤い贈り物 ~present for mother~

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▼ 12がつ、24にち 今日は、クリスマスイヴ。 クラスのみんなは、サンタさんからのプレゼントを楽しみにしている。 けれど、ぼくの家に、サンタさんは来ない。 ぼくはもう、六才になるのに。 どうしてかはわからないけど、今まで一回も、サンタさんはやって来なかった。 「ねぇねぇ、サンタさんに何もらうー?」 今日で二学期が終わり、明日から学校は冬休み。 帰り道、同じクラスの倉岡さんが、そんなことを言った。 「んーとね、あたしはおっきなくまさんの、ふかふかなぬいぐるみー」 「あ、オレはDS頼んだぜ! 黒いやつ!」 「ウチはハリポタの本だよぉ。 マイちゃんはぁ?」 「アタシ? アタシは新しいお洋服! 真っ白なワンピースだよ! あ、陽(はる)クンは?」 やっぱり、みんなの家には来るみたいだ。 そんなことを考えていると、倉岡さんがぼくに話しかけてきた。 ぼくは、首を横に振りながら、 「うぅん…ぼくの家には、昔からサンタさんが来ないんだ。 だから、プレゼントはお願いできないんだよ」 倉岡さんたちは、ビックリしたみたいだった。 「えー!? 愛蒔(まなじ)くんのお家ってそうなのー?」 「何だよそれ!ハルだけ不公平じゃんか」 同じように、驚いた様子のみんな。 でも、仕方ない。 サンタさんが来たことがないから、ぼくはプレゼントを頼めないのだ。 ……でも、そんなことはどうでもいいんだ。 ぼくはただ、それよりも―――― 「じゃあね、みんな」 交差点でみんなに手を振り、ぼくは自分の家にたどり着いた。
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