69人が本棚に入れています
本棚に追加
▼
朝が来た。
私にとってこの上なく憂鬱な朝が、来てしまった。
別に何か行事があるってワケじゃない。
単に、また新しい一日が始まるのだと思っただけだ。 思って、気が滅入っただけだ。
あぁ、今日もまた、何も変わらぬ一日が始まるのだな、と。
窓から射し込む、今日の始まりを告げる朝日が、叶うなら殺してしまいたいくらい憎たらしかった。
私は渋々ベッドから起き上がり、タンスから真新しい制服を取り出し、着替える。
山吹色のブレザーに、赤いチェックのスカート。 先日入学したばかりの、新しい高校の制服だった。
鏡の前に立つ。
片口で切りそろえた、薄い茶髪のショートヘアをした小柄な少女――――寝ぼけ眼の自分の姿が映り込む。
微妙に寝癖が付いていたので、軽く櫛を入れておいた。
「ハァ……」
櫛を置き、大きなため息を一つ。
これからリビングで、両親と共に朝食を取るのだと思った途端、自然とそれは漏れていた。
胸の中に渦巻く靄(もや)。
その嫌なモノを無理やり振り払い、昨晩きっちり中身を点検しておいた鞄を抱え、私は部屋を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!