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「うぬは……」
傷の主張を、言葉を紡ぐ事で抑える。
「……血を止めるのが先だろ」
幼くも、しっかりした言葉に遮られる。
巫女は悲惨な姿だった。
着衣は乱れ、口元から首にかけて朱は散り、白く美しい髪は絡まり合っていた。
(……無頓着過ぎる)
小さきモノは、巫女に悟られない程度に嘆息した。
「血を止める?ほう、そのような心得があるのか」
巫女が好奇の目を向けた時
口元に重ねられた、柔らかな感触。
そして唇の傷を這い…
パ ッ カーーーーーン!
周囲の樹々から再び鳥が飛び立って行った。
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