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朱が散る。
足下がおぼつかない。
巫女は邪に練り上げた霊力を放ったが、躱され、一撃を食らった。
直前で身を翻したので致命傷までは至らないが、傷を負った事に変わりはない。
口元から血が流れ出る。
穢された
瞳が怒りに染まる。
邪を前にし、傷を負うてなお、巫女は変わらぬ姿勢を保った。
『ワ、レ、の力見誤りしか、巫女』
邪が近付いて来る。
「……邪妖か」
言いながらも霊力を練り上げる。
『その血肉を糧とし、ワ、レ、は完全なモノとなる』
間に合わない
腕と思われる部位が振り上げられ、振り下ろされる。
直撃を食らえば、瞬時に肉塊と化す威力ある一撃が
止まった。
正確には、止められていた。
御影石と同じ背丈の、小さな背中が巫女の目の前に在る。
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