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その背中は小さかった。
巫女の腰の辺りまでしかない背丈。
どこをどう見ても、その背中は幼い。
しかし、弱くない。
振り下ろされた邪妖の腕は、幼き手に阻まれていた。
『キ、サマ……』
邪妖が揺らぐ。
ビ キ リ
何か引き千切れるような音が響く。
「腕、返してもらうぜ……兄者」
更に響き渡る、何かが引き裂かれてゆく音。
『ガアァァァ……!!キ、サ、マ……裏切り者……!』
邪妖の片腕らしき部位を、幼きモノは難なく引き千切る。
「巫女!封邪を!」
「我に命ずるな」
――小鬼が
「あぁっ?!」
激昂して振り向く、金色の瞳。
そのまま、瞳は釘付けになった。
霊力に呼応し、辺り一帯に鈴の音が響き渡る。
巫女の白く長い髪が、無風の中を揺らめく。
陽炎のように立ち上ぼる、今世に一人しかいない封邪を行なう巫女の
――絶大な霊力
そして口元が動き、冷徹な笑みへと形を変える。
「我に血を流させたしの」
滅 せ よ
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