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巫女は、目の前にいる小さき異形のモノを見る。
小さき異形のモノは、杜が闘いの場を清めてゆく様に目を奪われている。
邪と呼ぶには小さく……異質な姿。
邪は闇より生まれるだけに、人型に近い姿を取っても影法師のようにしかならない。
しかし、目の前にいるモノは明らかに人に近しい姿をしていた。
身体を覆う黒い毛、鋭い爪は邪の特徴。
だが、邪と決定的に異なる部分。
首下から額にかけては肌が見え、何よりも顔がある。
髪は紅く、耳は獣のような形をし、金色の角が側頭部からチラリと見える。
だがそれでも、闇の凝り固まったような姿しか見てこなかった巫女からしたら
(人に近しきモノ……)
沈黙を破ったのは小さきモノだった。
「凄いな、いつの間に杜は自ら清めの儀をするようになったんだ?」
金色の瞳が好奇心を隠さずに、巫女に向けられる。
「……我の方が聞きたい事があるのだがな」
チ ク リ
口を開いた事で、先程受けた傷が存在を主張し始めた。
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