1093人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
雅が九煉家に来たのは、
9月後半の木々が漸く紅く色付き、
綺麗に紅葉しだした秋の季節だった。
夏の暑さも取れて、
涼しさを感じる風が、
大気を包むようになりだした
……そんな季節。
それを楽しむように
屋敷の縁側を歩いていると、
琴と三味線の音色が優しく奏であい、
優雅な時間を刻み込んでいく。
弦が震えるたびに、心が和む。
どうやら、奥の部屋では
女達が習い事の真っ只中らしい。
秋の紅葉に彩られた庭先に出て、
景色を楽しみながら、
屋敷庭内での散歩の最中、
廊下から、親父達の後ろを着いて
とぼとぼと歩いてくる少年の姿が見えた。
屋敷の景色を目に取り込むように
視線をさ迷わせている。
落ち着きがないのか、
緊張してるのか……、
あぁ~、違うな……。
あいつの場合、
そのどっちもっぽい……。
最初のコメントを投稿しよう!