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「お母ちゃん、ナルは?どこにおると?」
母親は黙って亜子の手をひき棺の横へ連れていった
見慣れない箱の中で白い服を着て横たわるナル
眠っているように見える
「ナル…ナル?おばちゃん泣きよるよ?」
そう言うと亜子はナルの手首を掴み引っ張った
その瞬間である
得体の知れない感情が一気に流れ込んできた
ナルの体の冷たさ…固さに
理屈ではなく本能的に『死』というものが何なのかを思い知らされたのである
亜子はナルの顔を見つめたまま身動きが取れない
「亜子!大丈夫か!」
母親が亜子の肩を揺さぶる
「かえる…」
亜子は裸足で走り出した
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