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そして
今日も待ち続けている
地平線の彼方に薄紅のものが見え始めてから、彼はようやく速度を落とした。
昨日の晩から走り通しで脚はボロボロだったので、目的地に着いた途端、体はその場にくずおれた。
「……、……、……っ」
不自然に上がる息に苛立ちを覚えつつ、目印の木を見上げる。
薄紅の花弁舞う、小さな木―――桜。
『もしもはぐれてしまったら、ここから南にある桜の下で落ち合おう』
『……サクラぁ?』
『なんだ、知らないのか?桜っつーのはなぁ……』
ここが主人と落ち合う、待ち合わせの場所。戦渦に巻き込まれて、彼の主姿を消した。
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