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「大丈夫。俺が、キミの目になるよ。感じたことも触れたことも全て、教えてあげる」
隣に咲く洸鐘花をひとつ手折って、彼女の耳の上にちょこんと乗せる。
色褪(ア)せていく、紫暗の瞳がゆっくりと自分に向けられた。
潤んだ目が月光を受けて輝いて、まだキミの瞳に光があるんじゃないかと錯覚してしまう。
「…………イヴェー、ル」
キミのためなら
なんだってするから
俺に出来ることは
あまり多くはないけれど
それでも
俺は
キミの光に
なれるだろうか
キミを護るには
あまりにも弱すぎる
無力な勇者
少年は少女をそっと抱き寄せると、その耳に囁いた。
――ずっと、傍にいる
それくらいしか
してやれないけど
――だから、もう泣くな
闇は
恐れるものじゃないんだ
それは、満月の夜
洸鐘花だけが見ていた物語
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