218人が本棚に入れています
本棚に追加
祭り。
今までも、そしてこれからも二度と参加できない行事。
「祭りには店がたくさん出ます。お酒や菓子といった食べ物から、風車のようなものも………あとは力比べもありますね」
今挙げられたものの中では、己は風車しか出来ないなぁと思った。
飲んだり食べたりは体が受け付けないので出来ないし、力比べなんてもってのほかだ。
「でも、なんと言っても祭りは――――」
――ひゅるるる……どどん!
女中の声を遮って、騒音と共に突然夜空に咲いたのは大輪の華。
「あれは………!?」
「あれが祭りの醍醐味(ダイゴミ)、花火です」
話している間にも、花は咲いて散ってを繰り返している。
「……綺麗、だな」
「そうですね」
花火が終わるまでの束の間、二人は黙ってそれを見上げていた。
最初のコメントを投稿しよう!