<hanabi>

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  「さ、若様。お戻り下さい」    女中に導かれるまま、布団に体を沈める。  まだ心の臟がばくばくと波打って、こんな気持ちは久し振りだった。   「おやすみなさいませ」 「ああ。今日はありがとう。おやすみ」    障子が閉められた後も、まだ興奮が覚めなかった。  目を閉じれば浮かぶ、大輪の華。鮮やかに焼き付いて。   「…………ははっ」           ――ああ、祭りも   ――捨てたもんじゃないな                                池の蛙だけが  夏の夜に    いつまでも響いていた
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