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電話
「別れよう。他に好きな人出来たから。」
日本を発って三ヶ月後にかかってきた電話に出ればそう言われて…。
恐らく田中あたりなら焦るか‘判りました。’と言うかのどちらかだろう…。
けれど、これは自分を試す為の嘘。
捨て切れない詐欺師魂で瞬時に理解した。
「あぁ、とりあえず完治方法が見つかり次第そっちに戻るから。話はその時にな…。嘘だったらその時は…判っとるじゃろぅ?」
電話越しにビクッと反応したのが判った。
仕方ない。救いの手を差し出すかのぅ?
「もし嘘なら今のうちじゃよ?」
「ごめんなさい。最近構ってくれないからつい…。」
「大丈夫。ちゃんと気付いてたから。それより、墓参り行っとる?」
この一言で明美の怒りをかう事となる。
「何?そんなに絢音ちゃんの墓が大切な訳?大体裕生は……ー」
endless気味に続く怒りを長々しく聞くはめになる。
明美の怒りは必ず絢音に行き着く。
「仕方ないじゃろぅ?あいつは俺の初恋の相手なんだから。」
火に油を注ぐとはまさにこの事だった。
「もう知らない!浮気してやる。」
こんな台詞を残し明美は電話を切った。
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