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トリガーはジンクスの鮮やかな動きに見入っていた。彼はまるで、黒い風のようだ。
サーベルは深々と柱に突き刺さっており、スタームが暴れても抜ける気配がない。
ジンクスは悠然とした足取りでトリガーの脇を通り過ぎ、人質にされていた男に声をかけた。
「お怪我は御座いませんか、お役所の方」
「あ、あぁ……」
彼も間近でジンクスを見るのは初めてなのだろう、恋を覚えたばかりの少年のような眼差しでジンクスを見つめている。
誰もがジンクスを見ている中で、トリガーだけは違った。彼はスタームを見ていた。
スタームは巨体をねじり、手首を拘束するロープをサーベルで断ち切ると、ジンクスのサーベルを力任せに引き抜いた。
「危ねぇっ!」
トリガーは咄嗟に動いていた。
ポケットに忍ばせていた折り畳みナイフを開くと同時に、スタームに投げ付けていたのだ。
スタームは突然の横槍に驚きながらもこれを躱し、炎の目付きでトリガーを睨んだ。
思うや、スタームの巨体が俊敏に動いてトリガーに迫る!
スタームが手にするサーベルが、ギロチンの大刃を連想させて光る!
トリガーは腕で顔を庇いながら、恐怖からくる反射で目をつぶった。
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