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バサッ、
───ガシンッ!
布が風を切る音に続いて、刄が固いものにぶつかる、トリガーもよく知る音が響いた。
水を打ったような静寂に、トリガーは恐る恐る目を開ける。
「な───」
トリガーの視界を占めていたのは、黒いマント。
「怪我はないかな、少年?」
サーベルの鞘でスタームの攻撃を受けとめつつ、左手に持った銃の口をスタームの額に向けて彼を牽制{けんせい}しながら、ジンクスが訊いた。
そのままトリガーの返事を待たず、怒気をはらんだ低い声で、ジンクスはスタームに言った。
「あまり私の相棒を不名誉なことに使わないで頂けると有難いのだがね、スターム君」
「貴様……っ」
「これ以上騒ぎを大きくすると言うなら、私もあまり上品には出来ないな。君の罪を重くする必要もないだろう?」
ジンクスの言葉に、ぴくりとスタームの眉が動いた。
「君の気持ちも分からなくはないよ、スターム君。だからこそ今日ばかりは男らしく、静かにしているのはどうかな?」
スタームは食い縛った歯の隙間から鋭く息を吐き出すと、サーベルから手を離した。
ギロチンの大刃のように落ちようとしていたサーベルを爪先で軽やかに蹴り上げたジンクスはそれを鞘に納め、優しい声音でスタームに言った。
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