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トリガーの背中を冷や汗が濡らし、彼は動きを止める。
「……恐怖という感情は、きちんと持ち合わせているようだね。安心した」
ジンクスは微かに笑ったような気配を見せ、腰のホルスターに銃を戻した。
「助けてくれたことは感謝しているよ。有難う」
優雅な仕草で一礼したジンクスは、いつの間にか傍らにいた馬に跨がり、トリガーとハルトを見下ろした。
「スラム・キッズ、無鉄砲と勇気とを履き違えないことだな。忠告しておく」
馬の腹を締めてジンクスが走り去ると、ようやくハルトが拘束を解いた。
「頭冷やせよトリガー。俺達じゃジンクスに太刀打ち出来ない。さっきの見てりゃ分かるだろ?」
「黙れ腰抜け! 俺はお前と違って子供じゃねぇんだ!」
「子供じゃねぇなら、ちったぁ自分の立場を弁{わきま}えな。誰彼構わず喧嘩吹っかけて、お前に何かあったらシルフはどうなると思ってる?」
シルフという弱味を出され、トリガーは押し黙る。握った拳が激しく震えていた。
「所詮、俺達スラム・キッズはジンクスにだって助けて貰えない、ちっぽけな存在だ。自分のことは自分でどうにかするしかねぇんだ。なら自分の強さを知るしかねぇだろ」
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