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「シルフ、寒いだろ? もっとくっつけよ」
暗闇の中で響く少年の声には、隙あらば誰かに噛み付きそうな荒々しさが宿っている。
しかし、ごそごそと彼に身を寄せた少年は、怯える様子を見せない。
「……トリガー、あったかい」
「ああ。こういう日はな、こうやってくっついて、寒さをしのぐんだ。いつか必ず、俺がストーブを手に入れるから、それまではこうしてよう」
真冬の夜中。月も冴えるような日は、この倉庫の寒さは身に染みる。
少年達は生まれたての雛のように身を寄せ合い、一枚の薄い毛布で体を包んでいる。
「……トリガー」
「なんだ?」
「外が静かだね。雪が降ってるのかな」
「そうかもな。眠っちまいな」
「うん……」
室内であるにも拘らず、吐く息が白い。
トリガーはシルフを抱き締めるようにして、少年の体を温める。
「おやすみ、シルフ」
「おやすみ、トリガー……」
ベッドもない、棄てられた倉庫に住むようになって、どれくらい経つだろう。
トリガーとシルフは、何の血の繋がりもない。たまたまトリガーが見つけたこの倉庫に、シルフがいた。
怪我をしていたトリガーに、シルフは何の見返りも求めずに手当てをしてくれた。シルフが怪我をした時は、トリガーが手当てをした。
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