Introduction

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 そんなことを何度か繰り返すうちに、一緒に住むようになった。  トリガーは親を知らない。数年前に叩きだされた孤児院で育った。  シルフも親を知らない。資産家に潰された孤児院で育った。  親を知らず、帰る場所もない。  そんな二人だからか、自然と身を寄せ合う場所を探していたのかもしれない。  臆病なシルフは、外に出たがらない。だから、食料や金銭の類は、いつもトリガーが調達する。  働いたりなどしない。ナイフで脅して奪う。  この辺り一帯は治安が悪い。恐喝や殺しは茶飯事だ。  そんな場所で生きていくには、シルフはあまりに気が弱すぎる。トリガーのような狂暴さが皆無なのだ。  だからいつの間にか、トリガーがシルフを守るような形になっている。  トリガーにとって、シルフを守るという行為、そしてこの生活は、彼の唯一の拠り所だ。  「…………俺がいなきゃ駄目なんだ、お前は」  寝息をたてているシルフに囁き、トリガーは目を閉じる。  窓のない倉庫だけれど、外が雪だということは分かる。  壁に押しつけた背中が冷たい。だがシルフだけは守らなくてはならない。  明日は少しは晴れるだろうか。  今日は外に出ていないなら、明日は出なければ金が無い。
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