19人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
その日をどうにかしのぐだけの金を得るために、トリガーは危険を顧みずに行動を起こす。
老若男女関係なく襲って脅して金を奪うのも、そのせいだ。
大人の手など借りなくても生きていける。生きていかなくてはならない。
警察にさえ見つからなければいいのだ。それが、この地域の暗黙のルール。
他人の家には手を出すな。警察にさえ見つからなければ、誰からでも金を搾取していい。それがルール。
トリガーもそれに逆らわない。しかし、シルフにはそれが出来ない。
外に出ることが怖い。他人を脅すなど以ての外だ。
だからトリガーが、シルフの代わりにシルフの分まで金や食物を得る。
きっとトリガーに何かあったら、シルフは何も出来ない。
だからトリガーも、警察に捕まりそうな危険なことまでは、まだしていない。
シルフのためにも、ここに帰って来なければならないから。
「…………………」
薄く目を開けて、シルフを見下ろす。
何も知らない幼子のように眠るシルフが、トリガーの生きる理由でもある。
依存しているのかもしれない。執着しているのかもしれない。
だけど、シルフの隣は心地よい。自分の存在を必要とされていると感じられることは、思った以上に安らぐものだ。
差し違えてでも、シルフだけは守る。それがトリガーの生きる理由である限り。
最初のコメントを投稿しよう!