Introduction

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 その日をどうにかしのぐだけの金を得るために、トリガーは危険を顧みずに行動を起こす。  老若男女関係なく襲って脅して金を奪うのも、そのせいだ。  大人の手など借りなくても生きていける。生きていかなくてはならない。  警察にさえ見つからなければいいのだ。それが、この地域の暗黙のルール。  他人の家には手を出すな。警察にさえ見つからなければ、誰からでも金を搾取していい。それがルール。  トリガーもそれに逆らわない。しかし、シルフにはそれが出来ない。  外に出ることが怖い。他人を脅すなど以ての外だ。  だからトリガーが、シルフの代わりにシルフの分まで金や食物を得る。  きっとトリガーに何かあったら、シルフは何も出来ない。  だからトリガーも、警察に捕まりそうな危険なことまでは、まだしていない。  シルフのためにも、ここに帰って来なければならないから。  「…………………」  薄く目を開けて、シルフを見下ろす。  何も知らない幼子のように眠るシルフが、トリガーの生きる理由でもある。  依存しているのかもしれない。執着しているのかもしれない。  だけど、シルフの隣は心地よい。自分の存在を必要とされていると感じられることは、思った以上に安らぐものだ。  差し違えてでも、シルフだけは守る。それがトリガーの生きる理由である限り。
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