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翌朝は快晴だった。
真冬の冷たい空気も手伝って、太陽の光が目を刺すように輝いている。積もった雪が光を反射して、トリガーは光の洪水の中に立っているような錯覚に陥った。
雪を踏みしめて歩く。足首まで埋まるが、ブーツなので気にしない。
ポケットに常備している折り畳みナイフの感触を、ポケットの上から確かめながら表通りに出れば、スラムの孤児たちが仕事にとりかかろうとしているところだった。
「よぅトリガー。シルフは元気かい?」
トリガーより年上で、唯一トリガーと仲の良いハルトが声をかけてきた。
「ああ。シルフは俺に任せておけよ」
「しかしまさかトリガーが、誰かのお守{も}りなんかするとはね。スラム・キッズの間でも話題になってるぜ」
「そうか」
「シルフと一緒に住むようになって、どれくらいになる?」
「半年」
ハルトは感心したような声をあげた。
「自制心の欠片もないお前が、よくまぁあんな甘ちゃんと半年も暮らせるもんだな」
ハルトを睨んだトリガーの瞳が、獣さながらの険をはらむ。
「お前にシルフの何が分かる?」
ハルトは飄々と肩を竦め、薄情に笑った。
「分かる気もねぇよ、あんな臆病者。このスラムで生きてこられただけ儲けモンみたいな奴だ」
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