Obbligato

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 ハルトに悪気はない。ハルトの言っていることは正しい。  スラムで生きていくためには、どこまでも非情になれなくてはいけない。  それが出来ないシルフが、よくぞ無事でいられたものだと、出会った頃のトリガーも思っていた。  「まぁ何にせよ、シルフがお前を頼ってることだけが、今は事実だろ。無理しねぇ程度に助けてやんな。いざって時にゃ、俺も手を貸すからよ」  ぽん、とトリガーの肩を叩いたハルトは、ジーンズのポケットからお気に入りのスタンガンを取り出した。  「そんじゃ、お互い今日を生き残ろうぜ」  「ああ」  今日を生き残る。  スラム・キッズの最大の目標にして、絶対の行い。  スラム・キッズは孤児ばかりだ。大人の助けなど、得られるわけもない。  トリガーが一歩踏み出した時、不意に遠くからやかましい程のラッパの音が聞こえてきた。  「なんだ?」  「あぁ、そーいえば今日だったな、公開処刑」  「公開処刑……?」  眉を寄せるトリガーに、ハルトが浅く頷いた。  「大悪党が捕まって、絞首刑らしいぜ。見に行ってみるか? スリくらいなら出来るかもしれないぜ」  トリガーと違って、一時期は孤児院で教育を受けていたハルトは、きちんと字の読み書きが出来る。  恐らく公開処刑のことも、拾った新聞か何かで知ったのだろう。
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