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ハルトに先導されて、検問の裏をかいたトリガーは、公開処刑場の潜入に成功した。
「ほら、見えるだろ? あの台に立たされてる男。何度も凶悪な犯行を繰り返してきてたらしい」
「捕まるなんてバカだな。殺しちまえばいいんだよ、警察なんか」
「よせよトリガー。ここでそういうことは言うもんじゃない」
トリガーを咎めながらも、ハルトは長々読み上げられる罪状に耳を傾けている。
スラム・キッズの基準で判断しても劣悪な犯行ばかりが、何やら難しい言葉で述べられていく。
大悪党ことスターム(というらしい大男)は黙ってそれを聞いている。
が、急に動いた。
スタームの巨体が外見を裏切る俊敏さを発揮して、罪状を読み上げていた男の首に、自分の手首を縛っていたロープを背後から回した。
貴婦人が甲高い悲鳴をあげ、政府の役人たちが騒然となる中、スタームは大声を張り上げた。
「全員動くな! さもなきゃこいつを殺すぜ!」
「やれるものなら、やってみ給え!」
スタームの声に応えるように、凛として張りのある男の声が響いた。誰もがそちらに目を向ける。
同じように声のしたほうに顔を向けたトリガーが見たのは、処刑場を囲む石壁の上に屹立する、黒い影。
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