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「かんぱーい」
高らかに掲げたグラスを片手に、喫茶店Peaceの女店長である一ノ瀬薫(イチノセ カオル)は言った。
それに続くように理恵も控えめにグラスを上げる。
「何の乾杯だよ……」
秋は呟くと自分は関係ないとばかりに湯呑みを傾けた。
「秋も飲みなさいよ。明日からゴールデンウイーンよ、ゴールデンウイーン」
「ウイーンじゃなくてweekだから」
既に出来上がっている薫に突っ込みを入れた秋の英語の発音は無駄に良かった。
「理恵さんも、いくら薫姉さんが元大学先輩だからってあまり付き合わなくていいですよ。明日は店も休みだから他の人達みたいに帰っても良かったのに」
早々と帰ったアルバイト二名を差して言った。
「いえ、私もお酒好きだから大丈夫ですよ」
秋の向かい座る理恵は微笑むと、グラスの中の焼酎を飲む。
「ほらほら~、秋は私のお酒をのむの~」
隣に座る薫は自分のグラスを秋の頬にグイグイと押し付ける。
「飲まないよ。未成年者飲酒禁止法にもろ引っ掛かるから」
そう言うと秋は席を立つ。
「付き合いきれない、俺は寝るから。それと風呂には入るなよ」
秋はリビングを出ると自室に入った。
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