きっと、誰も、知らない

3/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「あるAから、Bへの手紙」 好きでした。 だから、 傷つけました。 好きだと想えば想う程に、この感情は貴方を傷つけていきました。 本当は、傷つけたくなどはなかったのに。 貴方の日だまりのような笑顔が好きでした。 時折優しげに細められる瞳が好きでした。 けれど今の私が思い出せるのは、貴方の絶望に歪んだ顔ばかり。 ……いつの頃からか、貴方は笑顔を見せなくなってしまいました。 いつも私を見る度に、貴方の顔は恐怖と絶望に彩られます。 愛してはいけなかったということぐらい分かっていました。 けれど、この躯を喰い破るような感情は、抑えることができなかった。 今、貴方の側に私はいません。 貴方を傷つける者は、もうありません。 私が貴方にしたことは、赦されない罪でした。 けれど、分かって下さい。 私が貴方を愛していたということだけは。 それだけは、分かって下さい。 (私はそれでも、貴方を愛していました)
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!