ナイフにお化粧

ふじわら

だれだっけ…?

ふじわらこうき?
ふじわらひろき?

ふじわら……

ふじわら……………

ああ、あの子だ。

私と同じように、いじめられていたあの子だ。

見た目は、目つきが悪くガリガリで、いかにも病弱って感じだった。
よく睨んでいるといちゃもんをつけられていた。

そんな目をカモフラージュするためにかけたのであろうメガネが、より一層、彼の陰気さを引き立たせていた。

下の名前がどっちだか思い出せない。
みんな「ふじわら」と呼んでいた。
そう呼んでいじめている声をよく聞いた。

うつむいて、聞いてた。
まるで私のことのように思えて。
直視できなかった。

だからなのか、「藤原」という漢字よりも、「ふじわら」という音の記憶が強い。