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「はい、もういいよ」
初めてのくすぐったい感覚に耐えること40分。
「見て」
鏡を手渡されたので、そーっと覗き込むと、そこには全くの別人が映っていた。
「う、わあ……」
ツルツルの肌、真っ黒な目、バッチリと長いまつげ、ほんのりと桃色の頬、つやつやな唇……
薄暗い部屋にとても似つかわしくない、派手な女の子が、そこにいた。
もともと着てた部屋着が、いま私の見た目において一番違和感を放つ存在になってしまっている。
華やかで気が強そうなこの顔で生きていれば、私まで気が強くなれそうな気がした。
「どうよ、俺の腕は」
フフン、とふじわらは得意げに笑った。
「すごい!すごいよ!ふじわら、天才だね!」
私は思わず大声を出した。
鏡を見て嬉しくなるなんて、生まれて初めての出来事だった。
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