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学園ものの劇で、私の役は、かわいい女の子という設定だった。
コメディという建て前で、私はアニメの女の子のお面をかぶらされた。
『不細工が隠れてちょうどいいんじゃねーの?』
って。
だけど、おざなりに演じて、あとからまた文句を言われるのはイヤだったから、私は必死に演じた。
キャピキャピの女の子。
客席から笑い声が聞こえても、私はひたすら演じた。
顔を見られるという恐怖は幸いお面が隠してくれたので、素顔で演じることを想像すると、幾分気は楽だった。
「あんたの演技、すごいと思った。あんたの変わりっぷりは、まるでドラマでも見てるみたいだったよ」
「そんなことない……」
視線を落とし、痛む手のひらを見ると、うっすらと血がにじんでいた。
「あるよ、そんなこと。普段はおどおどしてるくせに、あのときだけは別人みたいだった」
ふじわらが目をキラキラさせながら言うのを、私はぼんやりと聞いていた。
「お面つけてたからだよな?自分の顔が大嫌いなあんたがあそこまで演じられたのは……」
「化粧も、お面だと思えばいい」
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