25161人が本棚に入れています
本棚に追加
「すみませぇん」
いつもよりワントーン高い声を作る。
「はぁい」
グレー……いや、汚れてしまっているけれど元々は白かったであろう壁と、乱雑に漫画が並べられた木製の本棚の前に置いてある、背もたれの折れた椅子に座った男が、表紙が破けた漫画を読みながら、面倒くさそうに返事をした。
「サークルに参加したいんですが……」
そういうと、さすがにぞんざいに扱うわけにはいかないんだろう。やっと漫画から顔をあげ、男は私を見た。
「はいはい……あ!参加ね?何回生?」
途端に、目の色が変わり、打って変わって男はにこやかに対応し始めた。
覚えてる。
クラスのかわいい女子にだけは向けていた、この目。
私に向けていたのは、いつだって蔑んだ目だった。
久しぶり、豊岡正史。
最初のコメントを投稿しよう!