1公演目~シーン1~

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「そういえば、豊岡くんのほかには誰もいないの?」 部屋を見回し、尋ねる。 汚らしい部屋…… 「うん、いまの時間は先輩たちは授業だし、友達は売店にお菓子買いに行ってるんだ。俺は留守番」 誰もいないのは好都合だった。 次のセリフが使えるから。 「そうなんだー。じゃあ、私そろそろ出て行くね。2人っきりで話せたのは嬉しかったけど、緊張しちゃうし……」 すると豊岡は、にやけながらも必死に私の退室を阻止しだした。 「ええっ、まだいたらいいのに。好きな漫画とかあったら読んでてもいいんだよ?」 そう言って、汚らしい部屋とお似合いの、汚らしい本棚を指差す。 まさか。ごめんだよ。 「ううんっ、ほんと、今日は帰るよ。あ、でもあとでメールさせてもらうから、その時はかまってね?」 「そっか……わかった、メール来たらすぐ返すよ!」 残念そうなくせに目がキラキラしてるよ、豊岡。 そんなに理奈のセリフが嬉しいか? 「よかったあ!じゃあ、よろしくねっ」 最後に手をひらひらと振って、私は部屋を後にした。
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