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「そういえば、豊岡くんのほかには誰もいないの?」
部屋を見回し、尋ねる。
汚らしい部屋……
「うん、いまの時間は先輩たちは授業だし、友達は売店にお菓子買いに行ってるんだ。俺は留守番」
誰もいないのは好都合だった。
次のセリフが使えるから。
「そうなんだー。じゃあ、私そろそろ出て行くね。2人っきりで話せたのは嬉しかったけど、緊張しちゃうし……」
すると豊岡は、にやけながらも必死に私の退室を阻止しだした。
「ええっ、まだいたらいいのに。好きな漫画とかあったら読んでてもいいんだよ?」
そう言って、汚らしい部屋とお似合いの、汚らしい本棚を指差す。
まさか。ごめんだよ。
「ううんっ、ほんと、今日は帰るよ。あ、でもあとでメールさせてもらうから、その時はかまってね?」
「そっか……わかった、メール来たらすぐ返すよ!」
残念そうなくせに目がキラキラしてるよ、豊岡。
そんなに理奈のセリフが嬉しいか?
「よかったあ!じゃあ、よろしくねっ」
最後に手をひらひらと振って、私は部屋を後にした。
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