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ハルカのことは心配で
でも、それと同じくらいに悩んでいることがあった
――繋がらない記憶
あと少し…
何かきっかけさえあれば、掴めそうなのに…
そのもどかしさに胸が痛くなる
もう直ぐそこに、触れられるところまで来ているのに、スルリと躱されるような感覚
俺の縋るように伸ばされた手は、誰にも気付かれることはなく――
「んじゃ、俺マオ待ってから帰るけど、理緒さんどうする?」
「んー、先に帰っ「お、まだいた!一緒に帰ろーぜ」
教室を顔を出して覗き、俺たちの姿を確認した秋斗に言葉を遮られて、俺は苦笑した
悩んでいてもしょうがない
記憶は思い出す時には思い出すし、ハルカはこれから探して見つけ出せばいい
今何もしないでうじうじしてるなんて、
そんなの俺らしくない…よな?
立ち上がって秋斗の許へと向かう
「どうする?このまま帰るか?それともどっか寄ってくか?」
「ん…、このまま帰って鞄置いてから向こう行く」
「あぃよ」
そう、笑いながら頭をぽんと叩いてくる秋斗に照れ隠しのように顔を背けつつも
少し心が軽くなったような気がして、俺は秋斗の目を真っ直ぐに見つめ、笑みを返した
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