別々の2人

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「はぁ~ 客入りが悪い」 春の空を仰ぎながら、アシュリヤはぼやいた。 昼下がりのこの時間。 客足が一番遠のくカフェスタイルのテラスで、アシュリヤはダレていた。 ライアンが抜けて一番の痛手はこの時間だ。 基本的にお茶をするのは女性が多い。 よってこの時間に女性客を収穫出来ないのは、売上げに大きく差が出てきていた。 もともと客入りの少ない時間ではあったが、常に3席以上は埋っていて、まあまあの回転率を保っていたのに、いまや客は買い物に疲れて休憩を取る老夫婦のみである。 先日までの客入りが恋しい。 「そう言わないの。ディナーとバーでは、一生懸命歌うから」 時給制の為、売上げが気にならないルースは、アシュリヤの肩を叩く。 わかり易い子ね ルースは丸いトレーを抱えながら苦笑した。 アシュリヤは実に素直な……と言うより正直な子だ。 特に店の事に関しては顕著で、売上げや客足に一喜一憂し、店を褒められれば幼子の様に、その大きな目を輝かして笑うのだ。 ルースはそんなアシュリヤを見る度に、田舎に残して来た幼い弟を思い出す。 まだ数え年でも10に届かない弟。 アシュリヤはそんな弟に似ている。 「それって……精神年齢が低いんじゃ……」 その考えにたどり着き、ルースは自分の横で空を仰ぐアシュリヤを見た。 眉が八の字型に下がり、如何にも「困りました」と言わんばかりの顔をしている。 やっぱり子供ね…… 自分と3つしか違わないアシュリヤに、ルースは必死で笑うのを堪えるのだった。
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