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親不知に陣地を置いた東軍は、米沢藩兵千三百に御家人等の二百と高田藩兵二百の千七百の兵数であった。
米沢藩家老色部長門が越中口の総督として、この軍を率いていた。
大滝「御家老、高田藩からは僅か二百の援軍だけとは、拙者には合点が行きません。」
憤慨した体の米沢藩の先鋒隊長大滝新蔵が、総督の色部長門に不満を口にしていた。
色部「所詮は榊原家も頼りに出来ない事がわかったと言う事だ。
当てにならない者を頼るは愚かな事。
我等は河井殿の援軍が来るまで、前田家の軍勢を何とか足止めする事が肝心。」
大滝「左様では有りますが、外様の我等が戦っているのに譜代の者共の体たらくは歯噛みしたくなります。」
色部「まぁ、各々のお家事情があろう故歯噛みしたとて仕方あるまい。
それに、我等には海軍がいる。
この海沿いで戦う限り、敵は海軍の砲撃を避ける事からせずばなるまい。」
大滝「海軍はそろそろ来ましょう。
御家老、糸魚川藩はやはり我等に敵対いたしましょうか?」
色部「仕方あるまい越前松平家からの誘いがあれば、着かざるを得ないであろうよ。」
大滝「よもや高田藩は、譜代で先鋒を承るお家柄で御座るからには裏切りはないでしょうな?」
色部「御三家の悉くが敵に味方している今、譜代だからと言って味方だと思うなど愚の骨頂。
いつ敵になるか、我等にはわからん。
新発田や与板等も怪しい。
怪しいからと言ってわざわざ敵にするのも、如何であろうな?」
大滝「そう言われれば、その通りで御座いますな。」
色部「まだまだ戦は始まったばかり、一喜一憂していてはこの長い戦いを乗り切れぬぞ。」
大滝「流石御家老、感服致しました。
では、これより敵の様子を探りに行った者達の話しを聞いて参ります。」
色部「うむ、頼んだぞ。」
米沢隊の首脳二人はこうして戦への覚悟を決めていた。
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