再会

5/19

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
「お久しぶりです。」 騒ぎを聞きつけて、橘父が奥から顔を出した。 エプロンの粉を払い、店内に入って来る。 「また、よろしくお願いします。」 子供の頃は、熊のように大きかった橘父も、今では僕と同じくらい。 「大きくなったねぇ。」 頭を撫でられ、久しぶりの感触に頬が緩んだ。 僕の父は仕事で忙しく、滅多に家にいなかった。 今もそれは変わらない。 それでも淋しくなかったのは、必要以上にかまってくる母と、隣の橘家のお陰だった。 お腹が空けば、お店に出せないパンを貰い、 「ありがとう。」 と言えば頭を撫でられ、 「美味しかったよ。」 と言えば優しい目で頷いてくれる。 僕は橘父が大好きだった。 。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加