プロローグ

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   年齢その他一切不明の人物。  かろうじてわかるのは見た目が男だということ。  その人物は日本のどこかで服屋をしている。  店の二階に住んでいて、従業員を雇うわけでもなくひっそりと暮らしていた。  その店をひとりの少女が訪れた。 「いらっしゃい」  店の奥から出てきた店主は、のんびりとした口調で少女に声をかけた。  寝癖のような髪型に濃いグレーのくたびれたTシャツ、年期の入ったジーンズにサンダルといった出で立ちに少女は少々驚いた。  これで無精髭が生えていたなら売れない探偵のようだっただろう。 「やぁ。初めて見る顔だね」  少女は暫し唖然としていた。 「ゆっくり見てってね」  そう言って店主はカウンターへ腰掛け、タバコに火をつけてそこで落ち着いた。  そこに換気口があるらしく、煙は真っ直ぐに昇っていった。  服に匂いをつけないためだろう。  少女は店内を見て回る事にした。
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