終わりの朝

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どのぐらいの時間がたったのだろう 人目につかないように歩いていたが気が付くといつのまにか民家が軒を連ねる道に出ていた              壁伝いを歩き朦朧とする意識の中ここまで歩いてきたがどうやら限界のようだ              足の力が抜け、静かにその場に崩れ落ちる 私はここで死ぬんだ・・・と蒼く澄んだ空を見上げて考えていた              いずれ時間が経てば死ぬ 死に急ぐ必要はない・・・ 私は冷静に死を受け入れていた              目を瞑り消えそうな声でそっと歌を口ずさむ 施設内で仲の良かった子とよく歌った歌を・・・              その子は施設から脱走し行方をくらませている 私も彼女と一緒に行きたかった              彼女が私の前から消え私は一人になった 最初は孤独に震えていたが今はその孤独にも慣れてしまった              意識が徐々に薄れていく 彼女の顔が浮かぶ 口ずさむ歌・・・ 旋律が頭の中に凛と響く              歌っていて私はふと気付いた 涙を流している 私が・・・ もう枯れたと思ったのに・・・              「もう一回逢いたかったな・・・」 切実な願いを口にし静かに意識を闇へと落とした・・・              笑みを浮かべながら涙を流し眠るようにそっと静かに・・・
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