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「あっ……御守りがっ」
薫は切れた紐をつまみ、それを拾いあげた。
赤い布袋に金色の糸で刺繍の施された小さな御守り。つけられた絹の紐には白銀の鈴。
それは亡き父から貰った大事な宝物。ずっと大切にしてきた。その紐が切れてしまった。
「剣心……」
薫は不吉な予感がよぎり、その御守りを胸に抱く。
鈴がまた、チリンと鳴る。
「薫ちゃん?大丈夫よ。ほらまた紐は結えばいいから」
恵は落ち込む薫をなぐさめる。
「うん。有難う恵さん。あっこれ……」
先程取り出そうとした巾着を恵に渡す。
「妙さんがくれたの。剣心にあげてって。……渡しそびれたから今食べようかなって」
そこには薄荷(ハッカ)の飴が三つ。
二人で一つずつ口にいれた。残りは剣心へ。
薄荷の涼やかな味が口に広がる。思ったより甘くて、すっと体に染み込んでいった。
どちらからでもなく、二人の瞳からは一筋の涙が流れた。
それは薄荷が目に染みた所為か。恵も薫も、そのまま黙り込み、ただ口の中で飴が弾ける音だけ響かせていた。
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