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左之助は昨夜遅く、診療所にいた。
あれから神谷家に戻ることなく、ぶらついている所を恵に連れてこられたのである。
「で、剣心の様子はどうなんでぇ?」
左之助は横にあるベッドに腰掛け、恵の顔を覗いた。
「かなりの重症ね。原因が判らないわ」
「そんな……何とかなんねぇのかよ」
「明日、横浜の先生を迎えにいくわ。有名な方らしいから」
そう言うと手元の資料を手渡された。その医師の写真や地元の評判、外国での勉学の様子が書かれてあった。
後は難しい外国語で読む気にならず、恵の前に放り投げた。
「私達ではどうにも出来ないのよ。玄斎先生が紹介して下さった方なの。――そこまで剣さんは悪化して……」
「バカな……。治んのかよ!それ」
恵は立ち上がり、左之助の両肩を掴んだ。
「そんなんだから、剣さんには必要なの。心が落ち着く所が……。アンタの側が!」
「――意味が分かんねぇ」
「剣さんはね、熱に浮かされた状態で、その手を求めていたわ。『左之助』ってね……」
「――……っ」
「お願い。側に居て。剣さんの為に。私と薫ちゃんの為に……!」
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